「ねぇラナ」
セリスはおもむろに腰を下ろした。ラナがほんの少しだけ驚いた顔をしたのがわかる。
「はい、なんでしょう」
それから花が咲いたように微笑み、セリスの正面に座った。
「お昼にしようか、そろそろ」
「そうですわね、いつの間にか……もう、こんなところにまできちゃったんですね」
そこはティルナノグにセリスたちがいた頃、よくエーディン達と共によく来た花畑。解放軍が解散した後も変わらぬたたずまいを見せている。
名も知らぬ、小さな白い花。息づく緑の草木。ひだまり。
ここはみんなのお気に入りの、大切な場所。
ラナは藤で編んだランチボックスの中から、簡単に作ってきた昼食を取り出した。
「どうぞ」
「うん、ありがとう」
食べ終わった後も、ふたりでじっとしていた。
一息つく。
「いい天気だね」
「ええ」
正面の恋人。青空。小鳥。
風。
セリスとラナは、微笑を浮かべて空を見上げた。
「本当に、いいお天気……」
ラナの呟きにそうだね、と相槌を打って。
「きゃ」
セリスはパタンとラナの膝の上に転がった。
「セ、セリス様……?」
見上げたラナの顔は、困惑しながらも嬉しそうだったので
「いいじゃん、膝枕してよ」
「セリス様……」
そういうことはやる前に言ってくださいね、と恋人の呟き。
体制を少しなおす。足を伸ばして、ラナの顔がまっすぐ見れる位置に来た。
ラナは幸せそうな微笑のまま、膝の上の青髪を梳く。穏やかなその手の動きと、下から見上げるラナの顔。
小鳥が囀る。穏やかな日差し。耳を澄ませば、かすかに小川のせせらぎが聞こえる。草葉のこすれる音。花の素朴な香り。
「なんか、今、リーフの気持ちが分かるなぁ」
「え?」
なんですか、とラナは尋ね、
「リーフがナンナとよくこうやってたのを思い出してさ……」
なんだ、こんなに気持ちがいいならもっと早くやっていればよかった。
微笑。
ラナは顔を真っ赤にして照れてしまう。
「セリス様……」
セリスはその呼び声に答えるようにラナの頬にそっと触れた。
「ねぇ、ラナ」
「……なんでしょう」
「幸せだね」
「ええ、とても」
とても幸せですわ、と恋人たちは二人で笑う。